杉原こうじのブログ2

武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司の綴るブログです。こちらのブログ https://kosugihara.exblog.jp/ の続編となります。

【資料】「経済安保版秘密保護法案」の修正要項と附帯決議

立憲が提案した当初の附帯決議案にあった「適正な指定がなされているか等について確認を行うための第三者機関を整備すること」との重要な項目は確定版で全面削除されてしまった。


【解説】

当初の「立憲・維新教育・国民」合同にの附帯決議案にあった立憲民主党提案の「重要経済安保情報の適正な指定がなされているか等について確認を行うための第三者機関を整備すること」との重要な項目は、確定版で全面削除されてしまいました。一方で、「政策決定プロセスに外国勢力等の不当な影響が及ぶことのないよう留意すること」という排外主義的な項目や、「労働者の不利益取扱いの防止」「中小企業等の事業継続」等に関する検討などの項目が追加されています。また、当初案通り、「同盟国・同志国との間での機密情報共有の円滑化が進むよう、必要となる国際的枠組みの構築」や「インテリジェンス能力の更なる強化」など、むしろ秘密保護体制の強化を促進するような項目すら入っています。

 

◆重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する修正案要綱
(2024年4月5日、衆議院内閣委員会)
※自民、公明、立憲、維新教育、国民が賛成

一 重要経済安保情報の指定等の運用状況の報告等
  内閣総理大臣は、毎年、重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定の状況を第十八条第二項に規定する者に報告し、その意見を聴かなければならないものとすること。
(新第十八条第三項関係)
二 国会への報告等
  政府は、毎年、一の意見を付して、重要経済安保情報の指定及びその解除、適性評価の実施並びに適合事業者の認定の状況について国会に報告するとともに、公表するものとすること。 (新第十九条関係)
三 指定及び解除の適正の確保
  政府は、重要経済安保情報の指定及びその解除の適正を確保するために必要な方策について検討し、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。            (新附則第九条関係)
四 国会に対する重要経済安保情報の提供及び国会におけるその保護措置の在り方
  国会に対する重要経済安保情報の提供については、政府は、国会が国権の最高機関であり各議院がその会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定める権能を有することを定める日本国憲法及びこれに基づく国会法等の精神にのっとり、この法律を運用するものとし、重要経済安保情報の提供を受ける国会におけるその保護に関する方策については、国会において、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。                         (新附則第十条関係)
五 その他
  その他所要の規定を整理すること。

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◆重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案に対する附帯決議
(2024年4月5日、衆議院内閣委員会)
※自民、公明、立憲、維新教育、国民が賛成

 政府は、本法の施行に当たっては、次の事項に留意し、その運用等について遺漏なきを期すべきである。
一 重要経済安保情報の運用に当たっては、衆議院及び参議院の情報監視審査会からなされた指摘や改善事項を含め、特定秘密の運用の蓄積を踏まえ、情報保全の必要性と国民の知る権利のバランスに立った運用を行うこと。
二 本法の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならないこと。
三 本法に基づく重要経済安保情報の指定・解除、適性評価の実施、適合事業者の認定等を行うに当たっては、指定される重要経済安保情報の総量及びその取扱い業務の最適な規模をできるだけ具体化するとともに、制度の着実な実施を行うため、適性評価調査を行う内閣府や適性評価を行う行政機関における実効的な体制整備を速やかに進めるとともに所要の予算を確保すること。
四 適性評価調査への不同意や評価結果を理由とする不合理な配置転換・解雇など労働者への不利益な取扱いの防止のためには、事業者と重要経済安保情報の取扱いの業務に当たることが予定されている労働者との間の意思疎通が重要であることに鑑み、事業者の実情や事業の実態に応じた、労使間の協議も含めた適切な意思疎通が行われるようガイドライン等を作成することなどを検討すること。
五 中小企業等が事業を継続するために適合事業者の基準を満たす必要が生じた際に、中小企業にとっては必要な施設整備等にかかる負担が大きくなることが考えられるため、政府からの協力要請に応じて重要経済安保情報に触れることとなる場合など、経緯や実態も踏まえて、支援の在り方について合理的な範囲内で検討すること。
六 特定秘密保護制度を始めとする既存の情報保全の仕組みとの整合性、とりわけ、法人に対する両罰規定について見直すべき箇所がないか検討を行うこと。
七 重要経済安保情報を含む政府の政策決定プロセスに外国勢力等の不当な影響が及ぶことのないよう留意すること。
八 重要経済安保情報の指定は、本法の規定に従い、合理的で最小の範囲において行わなければならないこと。
九 重要経済基盤、重要経済安保情報の範囲を明確にするとともに、恣意的な指定がなされないよう、指定の具体的な基準等を公開すること。
十 重要経済安保情報に指定される前から民間事業者が保有していた情報については、その取扱いについて民間事業者が責任を問われないことを明確にし、広く周知すること。
十一 適性評価を実施するに当たっては、対象者のプライバシー権が侵害されることのないよう十分に留意するとともに、収集した情報は厳重に管理し、目的外利用されることがないようあらかじめ対策を講ずること。
十二 適性評価を行うに当たっては、対象者の弱みを握り情報を引き出す活動との関係についても十分留意しつつ、本法が定めた調査事項に基づき公正で実質的な調査を行うよう努めること。
十三 新たな技術開発の進展など経済安全保障分野における変化の速さ等に鑑み、情報の指定・解除を柔軟かつ機動的に行うため、重要経済安保情報に指定された事項については、指定要件の充足性について随時見直しを行い、国民の知る権利が侵害されないよう留意すること。
十四 民間事業者や適性評価対象者等への配慮として、適性評価における本人の真の同意、適性評価結果や同意拒否・取下げの目的外利用の禁止、評価結果と理由の速やかな通知と苦情の申出の適切な処理を確保するための方策(契約への明記、十分な情報提供、通報・相談窓口の設置等)を検討し、運用基準等において必要な措置を講ずること。
十五 適合事業者が重要経済安保情報を適切に保全できるよう、施設設備の基準等を作成・公表すること。また、「外国による所有、管理又は影響」(FOCI)を管理する制度の整備について検討した上で、適切な措置を講ずること。
十六 重要経済安保情報の指定の対象となる情報の範囲や制度の適用を受ける民間事業者の範囲等、本制度に関する正確な情報の周知徹底を図ること。
十七 民間事業者等が保有している情報であって国として経済安全保障の観点から保護が必要と考えられる最先端技術情報等について、民間事業者が必要となる対応をとれるような環境整備を検討すること。
十八 技術は我が国の自律性・不可欠性の重要な一部を構成するものであり、その流出防止は経済安全保障上喫緊の課題であることを念頭に置き、我が国の国際競争力の維持に支障を及ぼすこととなる国外流出を防ぐため、早急かつ徹底的に技術流出・技術管理対策の強化に取り組むこと。
十九 本法の適用に当たっては、産業分野の公正な競争環境が毀損されることのないよう十分留意すること。
二十 同盟国・同志国との間で重要経済安保情報を含む機密情報の共有が円滑に進むよう、必要となる国際的な枠組みの構築の推進に努めること。
二十一 経済安全保障に資するインテリジェンス能力を更に強化するため、政府全体における情報の収集・分析等に必要な体制を整備するとともに、関係省庁間における必要な情報の共有についても強化を図ること。また、本法の趣旨に鑑み、経済安全保障に資する情報について、民間を含む関係者への提供についても配意すること。
二十二 国際的な協力枠組みの中などの必要な場面において、外国政府などに本法に基づくクリアランス保有者であることを確認する仕組みの在り方について検討を行い、必要な措置を講ずること。