5/20のICC(=国際刑事裁判所)検察官によるイスラエル首相やハマス指導者ら双方計5人の逮捕状請求を受けて、米国等でICCを妨害しようとする動きが進んでいますが、バイデン政権のみならず、ICC加盟国の日本政府に対し、ICCの独立性を守るために行動するよう求めるNGO共同書簡案を起案しました。
【上川外務大臣宛 ICCの独立性を守るために日本政府に行動を求めるNGO共同書簡案】
書簡案こちらをクリック(このページの後半にも貼り付けています)
https://00m.in/TWzrH
皆様の団体におかれまして、日本政府宛の共同書簡にもご署名いただければ大変うれしく存じます。
米国でのICCへの対抗措置への動きが大変な速さで進んでいるため、短期間で恐れ入りますが、締め切りは【5月28日(火)正午】とさせてください。
フランス、オーストラリアなど少なくない国々が、ICCの独立性を守るべきとする声明を発表しています。ICCがその任務を有意義かつ効果的に果たせるかどうかは、日本政府などのICC加盟国そして国際社会が、どこで誰が重大犯罪を犯そうとも、公平で独立した裁判を支持するかどうかにかかっています。
日本政府にも迅速に明確な行動を取ってもらいたいと、日本の市民社会からの声を届けられればと思っています。多くのNGOが署名をしてくだされば幸いです。
署名フォームはこちら
https://forms.gle/UT78DsPWjMtymXJZ8
ご質問等ありましたら、何なりとお知らせください。
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ICCの独立性を守るために日本政府に行動を求めるNGO共同書簡
国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は5月20日、2023年10月7日以降のガザにおける戦争犯罪等の容疑で、ICC裁判部に対し、イスラエル政府高官2人(ネタニヤフ首相、ガラント国防相)およびハマス指導者3人(ヤヒヤ・シンワル、ムハンマド・ディヤーブ・イブラーヒーム・アル=マスリー(通称ムハンマド・デイフ)、イスマーイール・ハニーヤ)への逮捕状請求を行いました。
私たち日本のNGOは、日本政府が、ルールに基づく国際秩序にコミットするICC加盟国として、ICCの独立性を公に擁護すること、そして、ICCの活動とその関係者、そしてICCに協力する機関・人びとに対する脅迫・妨害を公に非難するよう要請します。
米国上院議員12人が4月24日、カーン検察官に書簡を送り、イスラエル政府高官の逮捕状発付への措置が進めば米国のICCへの支援を全面停止し、ICCとその高官を制裁対象とし、検察官と職員の米国入国を禁止すると脅しました。米連邦議会でもICC高官らへの制裁を目的とする法案が提出されています。下院議長は「ICCが手続きを停止し、米国がこうした忌まわしい行為を防ぐためにあらゆる手段を用いるべきことを即時かつ明確に求める(immediately and unequivocally demand that the ICC stand down and the US should use every available tool to prevent such an abomination)」とバイデン政権に訴えています。
一方、報道によれば、イスラエル政府は、検察局が進めるガザの捜査に反対する方向で、ICC加盟国などから支持を得ようとしているされます。イスラエルのネタニヤフ首相はICCを公然と非難し、ICCの動きに反対するよう各国政府に訴えています。こうした猛反発に対し、検察局は5月3日付で声明を発表し、裁判の運営に対する犯罪に関してICCが管轄権を持つこと(ローマ規程第70条参照)を指摘した上で、「裁判所の構成員への妨害、脅迫、あるいは不当な影響の行使を試みるすべての動きは直ちに停止されるべきであると主張」しました。ICCの統治機関である締約国会議(ASP)の議長国も、今回の反発を受けて、ICCの独立性を尊重するよう呼びかけています。
ICCが政治的妨害に遭うのは今回が初めてではありません。ご承知のように、米国の前政権は、制裁システムを濫用し、前任の検察官を制裁対象としました。これは米国やイスラエルの国籍保持者に関連する可能性のある捜査の妨害あるいは阻止を意図してのことでした。当時、67の加盟国、ASP議長国、非政府組織が裁判所を守るため声明を表明しました。米国の現政権が2021年に制裁を解除すると、日本もこの動きを歓迎しました。また、進行中のウクライナ捜査の一環としてロシアのプーチン大統領への逮捕状を出したことを受けて、2023年、ロシア政府は赤根智子現ICC所長を含む判事6人に逮捕状を出したほか、ロシア議会もICCへの協力を犯罪化する法律を制定しました。日本を含む加盟国およびASP議長国は、こうしたICCへの妨害を公に非難しました。
ICCは、世界の最も重大な犯罪の被害者に対して法による正義(訴追・処罰)をもたらす最後の機関たる裁判所として非常に重要な役割を有しています。日本政府をはじめICC加盟国には、審理に付されるあらゆる事態について、裁判所の公平と独立を守る責任があります。
日本政府とスイス政府は5月14日、国連安全保障理事会理事国において、ICC加盟国を代表して、「国際刑事裁判所、その職員、裁判所に協力する人びとへの脅迫や対抗措置をものともせず」、ローマ規程の価値観を守り抜く決意を改めて表明しました。
私たちは日本政府に対し、ICC裁判部が検察官の逮捕状請求に対する独立した審査を行うことを全面的に支持することを明らかにするよう要請します。また、ICCが今後逮捕状を出す場合には、これを公に支持するとともに、逮捕状の確実な執行に向けて日本政府が協力することを約束し、パレスチナおよびイスラエル当局に対してICCに協力するよう求めるよう要請します。
これまで数十年にわたり不処罰の壁に阻まれてきたイスラエルとパレスチナ双方の被害者のために、国際法に基づく責任を追及して裁きを下すことの重要性について、残念ながら多くのICC加盟国が口を閉ざしていました。こうした加盟国の姿勢はICCに関する二重基準との批判を招いており、ICCの公平性への信頼を損ねています。ICCが、管轄権を有するいかなる事態に対しても重大な国際犯罪の捜査・訴追を行いうることは極めて重要です。
ICCがその任務を有意義かつ効果的に果たせるかどうかは、日本政府などのICC加盟国そして国際社会が、どこで誰が重大犯罪を犯そうとも、公平で独立した裁判を支持するかどうかにかかっています。私たちは日本政府が、重大な人権侵害の容疑者を裁こうとする検察官や裁判官を脅し、妨害する側ではなく、残虐な人権侵害について法による正義を求める側に立つよう要請します。