杉原こうじのブログ2

武器取引反対ネットワーク(NAJAT)代表の杉原浩司の綴るブログです。こちらのブログ https://kosugihara.exblog.jp/ の続編となります。

【ウクライナ「社会運動」声明】米国によるベネズエラへの侵略の何が問題なのか?


※私も呼びかけ人の一人となっている「ウクライナ民衆連帯募金」がつながりを作ってきたウクライナ左派の「社会運動」(ソツィアルニィ・ルフ)による声明です。極めて的確かつ重要な内容だと思いますのでご紹介します(翻訳はウクライナ民衆連帯募金)。

ウクライナ「社会運動」(ソツィアルニィ・ルフ)声明>

米国によるベネズエラへの侵略の何が問題なのか?

2026年1月3日

1月3日の朝は、ラテンアメリカの諸民族にとって、そしてそれだけにとどまらず、民主主義と条件付きの平和に対する大規模な攻撃の始まりとなった。

米国の軍事作戦後、ニコラス・マドゥロ大統領が拘束され、動員を伴う非常事態が導入されたベネズエラの事態は、帝国主義的対立の激化を示す新たな表れであり、その影響は大陸全体で何百万人もの人々が感じることになるだろう。

ドナルド・トランプ政権の行動は、孤立した事件や「やむを得ない危機対応」ではない。カリブ海や太平洋での小型船舶の爆撃から制裁による封鎖に至るまで、これまでもそうであったように、これは力の誇示であり、国際法や司法手続き、調査を一切無視して暴力を行使する用意があることを示すものだ。麻薬取引やカルテルとの闘いといった口実は、侵略を正当化するために使われている。しかし、麻薬に精製される前の成分の大部分は、つい最近まで中国で生産されていたと言われている。ベネズエラ領を通過する麻薬取引の割合は、地域内の他国や海上ルートと比べてもごくわずかに過ぎない。

「麻薬カルテルと結びついた指導部との闘い」という言い訳は、トランプが最近、米国の刑務所からホンジュラスの右派元大統領エルナンデスを恩赦で釈放したことを考えると、特にシニカルに映る。彼はコカイン取引への関与で長期刑を言い渡されていたが、直近の選挙で同盟勢力を支援させるために釈放されたのだ。「テロとの戦い」と同様に、真の目的は防衛ではなく、石油や鉱物資源の支配、そしてワシントンに忠実な政権の樹立である。

同時に、物事をはっきりと呼ぶ必要がある。ニコラス・マドゥロ政権は権威主義的で抑圧的、そして深く腐敗している。ウゴ・チャベスの遺産やボリバル主義的レトリックを装っているが、社会主義的民主主義とは何の関係もない。破壊的な米国の制裁と並んで、経済崩壊、社会的惨事、超法規的殺害、生活の困窮、そして何百万人ものベネズエラ人の大量流出に対する責任は、まさにマドゥロ政権の政策にある。マドゥロ政権は、チャベス時代の大衆運動の成果や社会プログラムを無に帰し、この地域における左派思想を貶めることしかしなかった。民衆に寄生するこの体制は、治安機関、自由の制限、そしてとりわけロシアからの対外的支援によって維持されてきた。

クレムリンは、権威主義的な統治モデルを維持する上で、カラカスの主要な同盟者の一つとなった。ロシア外相セルゲイ・ラブロフは、2023年4月を含め、ベネズエラを何度も訪問している。これは、ウクライナに対するロシアの戦争への政治的支持を動員する目的で、ブラジル、ベネズエラニカラグアキューバを巡る歴訪の一環だった。ニカラグアのサンディニスタ革命の裏切り者ダニエル·オルテガほど露骨ではないにせよ、マドゥロ大統領は全面侵攻の初期からロシアへの「全面的支持」を表明し、国家機関やメディアはクレムリンの解釈を積極的に広めてきた。

しかし、マドゥロ政権をベネズエラ社会そのものと同一視するのは重大な誤りである。

大規模なプロパガンダにもかかわらず、多くのベネズエラ人は親ロシア的な言説を受け入れなかった。2022年のロシアによるウクライナ侵攻の最初の数日間から、デモが日常的に犯罪化され弾圧される国で、人々は侵略に反対する抗議行動に立ち上がった。ベネズエラ人はウクライナ国旗を掲げ、「Stop Putin」と叫び、自国政府とクレムリンの同盟を公然と批判した。

このウクライナへの連帯には深い根がある。ユーロマイダンの時代から、多くのベネズエラ人は、ウクライナの闘いを、腐敗した権力、外部からの支配、権威主義に対する身近で理解しやすい闘争として受け止めてきた。ウクライナへの共感は反戦感情だけでなく、外国からの影響に対する拒否感からも生まれている。それはマドゥロ政権の存続、そしてウラジーミル・プーチン政権の存続にとっても決定的であり、両者はいずれも国際刑事裁判所ICC)の捜査対象となっている。

1999年以降、ウクライナベネズエラは友好的な関係を築いてきた。その基礎は、当時のウクライナ外相ボリス・タラシュクが、当時のベネズエラ大統領ウゴ・チャベスに迎えられた時期に築かれた。注目すべきことに、チャベス時代にロシア連邦ベネズエラの領事を務めていたホセ・ダビド・チャパロは、2022年にウクライナ領土防衛国際軍団に参加し、ロシア軍によって破壊された都市の復興に携わった。

だからこそ、現在の米国の侵略は、マドゥロ批判をもってしても正当化できない。最近発表された「国家安全保障戦略」で、ラテンアメリカカリブ海地域を「モンロー主義」の精神に基づく従属的な「裏庭」の役割に戻すと宣言した米国帝国主義は、自らの経済的・地政学的利益に合致しないあらゆる政権を地域から「一掃」し、同時に極右勢力を強化しようとしている。

コロンビアの進歩的政権の孤立化、メキシコの同様の政権への脅し、米国の納税者の負担によるアルゼンチンの極右政権との同盟強化、ジャイル・ボルソナロ率いるブラジルのネオファシスト復古主義者への支援、エルサルバドルのブケレ政権による悪名高い巨大刑務所を、米国からの強制送還者の収容に利用すること 一 これらはすべて、ラテンアメリカにおけるワシントンの覇権回復戦略の一部である。象徴的なのは、トランプ前政権時代にもベネズエラ問題を担当していたのがエリオット・エイブラムスであり、彼はレーガン時代に反共独裁政権の「死の部隊」の訓練に関与し、エルサルバドルのエル・モソテ村で約1000人が殺害された事件を含む、中米内戦の犯罪の90%以上に責任を負っている人物だ。
 
外部から押し付けられる「体制転換」は、社会的惨事をさらに深刻化させるだけである。ベネズエラ難民に対するトランプの人種差別的政策と同様、この戦争は人命を軽視する政治の延長線上にある。たとえ直接的な大量犠牲が避けられたとしても(1989年に独裁者で麻薬密売人でもあったノリエガを排除するために行なわれた米海兵隊の侵攻では、少なくとも数百人の民間人が死亡した。ノリエガはそれ以前、地域の革命運動と戦う中でCIAの協力者だった)、外部からの不安定化はさらなる国内混乱を招くだろう。

さらに、「トランプ主義的」野党勢力による政権掌握も危険を含んでいる。マドゥロ社会主義カリカチュアであるのと同様、民主主義運動のカリカチュアが、マリア・コリナ・マチャドの極右・超資本主義路線である。彼女はノーベル平和賞を受賞した後、それをトランプに譲りたいと公言し、自国に対する彼の介入を支持すると強調してきた。これに対し、マドゥロ主義に反対する左派の野党勢力は、ボリバル革命の失望した支持者をますます取り込みながら、軍事シナリオの拒否と、ベネズエラの運命は帝国主義の支配者ではなく、ベネズエラ人自身が決めるべきだと主張している。

マドゥロ独裁との闘いと、米国帝国主義との闘いは矛盾しない。それは、地政学的な駆け引きの中で人々が人質にされる、一つの対立の二つの側面である。だからこそ今日、ロシアの侵略に抵抗する中でベネズエラ人がウクライナに示してきたのと同じ連帯を、ベネズエラの人々に向けて語る必要がある。

ベネズエラ人民は、帝国主義のくびきと、略奪的なマドゥロ政権の人質となりながら闘っている。

ベネズエラよ、私たちもまた帝国主義に抵抗している!