7月2日に外務省から、7月9日には防衛省から、イスラエル製攻撃型ドローン輸入などに関する追加質問への回答が届きましたので、取り急ぎお知らせします。
防衛省は、川崎重工の橋本康彦社長発言(輸入は災害対応が目的)との食い違いを尋ねた最後の質問には逃げました。さすがに口裏合わせはできないようです。
また、防衛省が小型攻撃用ドローンについて追加の2機種の募集を始めたのは、2月5日であることが分かりました(質問2)。つまり、2月20日の市民との交渉の前に、既に追加を決めていたということです。
※特に川崎重工に関する最後の質問については、さらに追及していきたいと考えています。
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◆イスラエル製攻撃型ドローンの輸入などに関する防衛省への追加質問と回答
1.質問2に関し、実証試験で用いる実機にイスラエル製が含まれるという点について、今まで説明を行った国会議員について、日付と議員名(所属政党名)を具体的に示されたい。
【回答】
お答えは差し控える。
2.質問3に関し、小型攻撃用UAVについては、3月にさらに2機種の実証試験を行う契約をしたと説明された。これに関して、追加機種の募集を行うと決めたのはいつか、募集を開始したのはいつか、また何社から入札があったか、さらに、追加契約の日付はいつか、示されたい。また、追加したスペイン・アルキミア社製QSLAM(双日エアロスペース)と豪州・ディフェンドテックス社製Drone40(丸紅エアロスペース)のそれぞれの落札価格を示されたい。
【回答】
(募集を行うと決めた時期)
小型攻撃用UAVについては、令和6年2月に、当該実証試験に係る入札の公告を実施したところ。
(募集を開始した時期、入札者数、契約日、落札価格)
追加した2つの契約について、公告日、応札者数、契約日、契約金額は以下のとおり。
機種 契約相手方 公告日 応札者数 契約日 契約金額(円)(税込)
QSLAM40
双日エアロスペース株式会社 令和6年2月5日 1社 令和6年3月28日 40,810,000
Drone40
丸紅エアロスペース株式会社 令和6年2月5日 1社 令和6年3月29日 117,700,000
3.質問3に関し、今回の小型攻撃用UAVは「Ⅰ型の枠組み」との説明だったが、「攻撃に用いる飛翔タイプの小型無人プラットフォーム等に関する情報・提案要求書」に示されているⅡ型、Ⅲ型について、実証試験の候補機はどうなっているのか。製造国名、製造企業名、輸入代理店名、落札価格について具体的に示されたい。
【回答】
小型攻撃用UAVの型及び型の実証機種、製造企業、製造国、契約相手方及び契約金額は以下のとおり。
実証機種 製造企業 製造国 契約相手方 契約金額(円)(税込)
<小型攻撃用UAVⅡ型>
Drone81 DefendTex オーストラリア 丸紅エアロスペース株式会社 336,600,000
HERO120 Uvision イスラエル 住商エアロシステム株式会社 60,637,500
<小型攻撃用UAVⅢ型>
SkyStriker Elbit Systems イスラエル 日本エヤークラフトサプライ株式会社 14,300,000
4.質問5について、既に納入された小型攻撃用UAV5機種の実証試験報告書は納税者、主権者に公開されるのか。公開されるなら、いつ、どのような形でか。また、それらは情報公開請求の対象となるか。
【回答】
今般の小型攻撃用UAVの実証に係る成果報告書の内容については公開する予定はない。また、今般の成果報告書は、行政文書に該当し得るため、情報公開請求の対象となる 。
5.質問6に関し、イスラエル製の候補機5機種について、ガザや西岸、ゴラン高原、南レバノンにおいて使用された実績はないかどうか、イスラエル側に照会するなり、防衛省独自に調査するなりして、可能な限り明らかにすべきである。ちなみに、「Heron-TP」は2004年に初飛行し、2010年前後から作戦投入されており、南レバノンでもよく確認されているとの情報がある。防衛省として上記の作業を行ったうえで、結果を示すように求める。
【回答】
6月21日の説明の際にお答えした通りである。
6.質問7に関し、支払い額(契約額)はROTEM Lが1円、Point Blankが1円、HERO120が6063万7500円、SkyStrikerが1430万円、Heron MKⅡが31億5062万円だが、豪州ディフェンドテックス社製のDrone81、およびSUBARU製のVTOL機について、それぞれの落札価格を示されたい。そのうえで、実証試験の経費99億円のうち、こうした契約金以外に使われる費用があるなら、その内訳を示されたい。
【回答】
(2機種の落札価格)
丸紅エアロスペース株式会社(機種 Drone81)の契約金額は 336,600,000円、株式会社SUBARU(機種 VTOL機)の契約金額は655,817,800円である。
(契約金以外に使われる費用)
令和5年度予算に計上された小型攻撃用UAV及び多用途UAVの実証試験のための経費(約 99億円)については、防衛省職員の旅費(約300万円)が含まれている。
7.質問9に関し、「今般の1円という低価格での入札に関しては、関係法令に基づき必要な調査を実施した」とあるが、具体的にどの関係法令に基づき、どのような調査を実施したのか。
【回答】
今般の調査については、予算決算及び会計令(昭和二十二年勅令第百六十五号)第86条第1項に基づき実施した。
具体的には、株式会社海外物産が防衛省との間で締結したこれまでの契約の履行状況、該社の財務状況、本契約の履行体制等を調査した。
8.質問10に関し、今まで契約解除の申し出を受け、契約条項に則って、違約金の請求等を行ったケースについて、具体例(時期と案件、違約金の金額)をすべて示されたい。
【回答】
令和5年度に納期を迎えた契約のうち、一例として水筒、ベッドパッド等の契約について、契約相手方から防衛省に対し、契約解除の申し出があったことから、契約条項に則り、違約金の請求等を行った。
なお、具体的な時期や違約金の金額等については、契約相手方である事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるためお答えを差し控える 。
9.質問12の防衛省回答に関し、「ハマス等」の「等」の具体的な中身を示されたい。また、「テロ攻撃」と断定されたが、その場合の「テロ」という表現の意味、そう断定するに至った根拠と情報、資料について具体的に示されたい。
【回答】
「等」にはパレスチナ武装勢力のイスラム聖戦(PIJ)が該当する。
「テロ」について、国際的に確立した定義は存在しないが、一般的には、特定の主義主張に基づき、国家等にその受入れ等を強要し、または社会に恐怖等を与える目的で行われる人の殺傷行為等をいうと承知している。2023年10月のハマス等の攻撃については、多数の一般市民を標的として、殺害や誘拐を行う残虐 な無差別攻撃であり、我が国として、これを「テロ攻撃」として断固として非難しているところである。
10.質問14に関し、国際司法裁判所(ICJ)の暫定措置命令を受けての上川外相の談話(「誠実に履行されるべきである」)について、防衛省はどのように受け止めているのか、示されたい。
【回答】
(日イスラエル防衛協力・交流との関係)
ご指摘の外務大臣談話にあるとおり、国連の主要な国際司法機関であるICJ の暫定措置命令は、当事国を法的に拘束するものであり、誠実に履行されるべきものであると認識している。
また、ガザ地区を巡る現下の情勢を深刻な懸念をもって注視しており、ガザ地区における極めて深刻な人道状況を認識している。こうした中、防衛省・自衛隊としては、防衛当局間における意思疎通をしていくための対話のチャンネルを維持することは重要であると考えている。
(イスラエルドローン輸入との関係)
6月21日の説明の際にお答えした通りである。
11.質問19などに関し、「実証と輸入は必ずしも結びつくものではない」「実証とはまったく別の制度で機種の選定を行う」との回答があった。しかし、「別の制度とは何か」との問いに明確な回答はなかった。実証試験は本格導入のための判断材料の一つと考えるが、そうではないのか。また、「別の制度」の具体的内容を示されたい。
【回答】
実証試験で使用した機種が、必ずしも装備品として導入される訳では無いという趣旨で「別の制度」と申し上げた。
12.6月28日を最終回答日にして公募している「水上艦艇からの攻撃に用いる飛翔タイプの小型無人プラットフォームに関する情報・提案要求書」について、公募結果(製造国名、製造企業名、輸入代理店名、落札価格)が明らかになり次第、示されたい。
【回答】
ご指摘の情報・提案要求書は、水上艦艇からの攻撃に用いる飛翔タイプの小型無人プラットフォームについて、企業等から情報・提案を広く募集するためのものであり、入札を目的としたものではない。
13.川崎重工の橋本康彦社長は、6月26日の同社株主総会で、株主からのイスラエル製攻撃型ドローンの輸入に関する疑問に答えて、同社は貨物輸送できる自社製無人ヘリコプターの被災地での活用などを検討しており、輸入はその一環だとして、「災害時に有人機が飛んでいけない場面で無人機の技術が必要。イスラエルの無人機(の輸入)は南海トラフ巨大地震が発生した場合の仕組みに生かすためで、戦争に使用する目的ではない」と述べたという(6月26日、神戸新聞デジタル版)。これは今までの防衛省の説明と根本的に食い違っており、重大な問題だと認識している。事実だとすれば、防衛省の今までの説明は虚偽だったことになる。橋本社長の説明は事実か。なぜこのような本質的な食い違いが生じているのか、具体的に説明されたい。
【回答】
ご指摘の川崎重工業(株)に関する報道について、防衛省としてお答えする立場にない。
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◆イスラエル製攻撃型ドローンの輸入などに関する外務省への追加質問と回答
質問17に関し、日本政府は、1月10日に発出された計48か国・1機関による共同声明「露朝間のミサイル移転に関する外相共同声明」に加わっている。外務省ホームページに掲載されている声明には、「露朝間の武器移転に断固として反対する」と明記されている。つまり、外務省の「第3国間の武器輸出について、日本政府として立場を述べることは差し控える」との回答は誤りであることは明らかである。改めて、質問17について、真摯に回答されたい。
【回答】
御指摘の第三国の武器輸出について、日本政府として逐一コメントすることは差し控えます。また、御指摘の第三国の武器輸出に関して、いかなるやり取りを関係国と行っているか否かについても、外交上のやり取りとも関わるため、お答えを差し控えます。
いずれにせよ、我が国としてガザ地区における危機的な人道状況を深刻に懸念しており 、人道支援活動が可能な環境が持続的に確保され、また、人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待しており、このような立場を踏まえ、
欧米諸国を含む関係国と緊密に連携しつつ、イスラエルへの働きかけを含む様々な外交努力を精力的に展開してきています。引き続き、人質の解放や人道状況の改善、事態の早期沈静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に行っていく考えです。
(参考:令和6年6月4日参・外防委でのやり取り抜粋)
山添拓君 米国バイデン政権は五月、イスラエルに砲弾や戦闘用車両など総額一千五百五十億円以上の武器 を売却する方針を議会に通知しました。サリバン大統領補佐官は、ラファへの本格侵攻に反対を表明しつつ、イスラエルに武器は送り続けると述べています。米国のこうした姿勢がイスラエルのガザへの攻撃を支援しているのではないかと本会議で質問をいたしましたが、答弁がありませんでしたので、外務大臣の認識を改めて伺います。
国務大臣(上川陽子君) 第三国であります米国とイスラエルの関係につきまして、日本政府として逐一コメントすることにつきましては差し控えさせていただきます 。 その上で、六月の二日に発出した私の談話のとおり、我が国として五月三十一日にバイデン大統領が述べたイスラエルとハマスの間の人質解放や停戦をめぐる交渉に関するイニシアチブを強く支持しており、全ての当事者がこの機会を捉え、全ての人質の解放と持続可能な停戦の実現に向けて 着実に取り組むよう強く求めるところであります。最近におきましても、私からカッツ・イスラエル外相との電話会談で働きかけを行ったほか、昨日のG7議長国でありますタヤーニ・イタリア副首相兼外務国際協力相との電話会談におきまして、 両国間及びG7での連携 で一致をしたところでご ざいます。
山添拓君 コメントを控えるという答弁自体が私は極めて不誠実だと思いますし、はなからダブルスタンダードですよ。 北朝鮮のロシアへの武器提供は強く非難するとおっしゃったんですね、北朝鮮のロシアへの武器提供。しかし、米国のイスラエルへの武器の提供については、コメントを差し控える、いや、それどころか、むしろ米国の対応について評価しているというような答弁でした。これ、大問題の姿勢だと思うんですね。 ロシアはウクライナへの侵攻を自国民保護の特別軍事作戦と称しています。イスラエルも自衛権行使といってガザ攻撃を続けています。侵略であれ、自衛の名目であれ、武器の輸出は国際紛争を助長します。その認識が問われていると私は考えます。