【2024年11月26日 防衛省との意見交換での質問事項】
第二次大戦後80年を目前にして、近隣諸国との軍事的緊張が、これまでにないほど高まっている。高性能の軍備の際限のない導入は市民の生活のための予算を圧迫する。そうした事態を回避し、緊張緩和のための外交を進めることが、いまほど求められている時はない。
そうした立場から、下記の事項について質問させていただく。(ページ数は、防衛省HP掲載の「防衛力抜本的強化の進捗と予算-令和7年度概算要求の概要」のページを示している)
1. 12式地対艦ミサイル能力向上型(地上発射型)の量産は、どこまで進んでいるか。おおよその製造済数量を明らかにされたい。また、23年度に計上した予算は使い切ったか、24年度に計上した予算は使い切る見込みであるかどうか、明らかにされたい。
2. 量産された12式地対艦ミサイル能力向上型(地上発射型)は、どこに配備する予定であるか。
23年3月16日の石垣駐屯地の開設を受けて、石垣市の中山市長は「12式能力向上型の石垣島への配備という話は聞いていない。配備の話が来てから検討したい」と市議会で答弁している。こうした経緯を踏まえれば、地元自治体及び住民に対して事前説明し了解を得るべき、また住民の了解が得られなければ配備すべきではないと私たちは考える。
2-1 12式地対艦ミサイル能力向上型(地上発射型)は、どの地域に配備する計画であるか明らかにされたい。
2-2 自治体および住民に対して、配備にあたって事前の説明会を開催するかどうか明らかにされたい。
2-3 12式地対艦ミサイル能力向上型(地上発射型)の配備は、25年度中に完了する予定であるか、それとも、26年度以降も続くのか明らかにされたい。
3. 米国から購入するトマホーク巡航ミサイル(タイプⅣとタイプⅤ、ともに射程距離は1600km)は、25年度から日本に搬入されるのかどうか、また、イージス艦に配備するという答弁もあったと記憶するが、どこに配備(保管)する計画であるか明らかにされたい。また、そのことは地元自治体、住民に事前説明会などの形で周知されるのか。
また、「トマホーク発射機能の艦艇への付加」として18億円が計上されているが(12ページ)、これは何隻分の費用か。
「こんごう」型イージス艦の除籍に伴う後継艦等検討のため、技術調査を実施として33億が計上されているが(14ページ)、これは「こんごう」型4隻(こんごう、きりしま、みょうこう、ちょうかい)を順次除籍するということか。これは、中国のレンハイ級ミサイル駆逐艦の増産に対する対抗措置と理解してよいか
4. 25年度予算に12式地対艦ミサイル能力向上型(艦艇発射型)の取得費として170億円が計上された。年度内に製造が完了すれば、ただちに護衛艦に配備するのか。それとも、配備は26年度以降を計画しているかを明らかにされたい。また、配備の方式は、垂直発射装置(VLS)への収納であると考えてよいか。
トマホークと12式能力向上型を搭載した護衛艦は、これまでの射程距離160km程度のミサイルしか装備していなかった護衛艦とは根本的に異なり、強力な攻撃力をもった艦艇となり、場合によっては地上攻撃もできることになる。
憲法9条をもつ日本は、相手国の領土をトマホークや12式で攻撃することはできない、と私たちは考えるが、防衛省の見解を明らかにされたい。
5. 「極超音速誘導弾の製造態勢の拡充等」(12ページ)に、2,569億円が計上されているが、これは量産のための初度費(初期設備投資費用)と理解してよいか。また、24年7月4日付防衛省の「スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について」で、「島嶼防衛用高速滑空弾は令和8年度(2026年度)に取得を予定しております」としているが、このスケジュールに変更はないか。
また、「極超音速誘導弾」と「島嶼防衛用高速滑空弾」は同じものか。それとも、「島嶼防衛用高速滑空弾」の中に、「極超音速誘導弾」と、そうでないものがあるという理解でよいか。
6. 「無人アセット防衛能力」(15ページ)に約1032億円が計上されている。
6-1 予算額が明示されたものを合計しても192億円にしかならないため、1032億円全体についての明細の提示を求める。
艦載型UAV(小型)の取得(37億円)
UAV(中域用)機能向上型の取得(2式39億円)
UAV(狭域用)(173式47億円)
UAV(広域用)(383式11億円)
小型広域用UAVの取得(30億円)
UGV(陸上無人機)システムに関する研究(14億円)
長期運用型UUV(水中無人機)の研究(14億円)
6-2 2025年度予算概算要求に小型攻撃用UAVの取得費として30億円が計上されている。310機の取得が計画されているとのことだが、これは1機種か。また、26年度以降に追加購入する予定はあるのか。
6-3 小型攻撃用UAVの運用実証に追加したスペイン・アルキミア社製QSLAM(双日エアロスペース)と豪州・ディフェンドテックス社製Drone40(丸紅エアロスペース)について、実証試験が終了し報告書が提出されたのはいつか。
6-4 取得する小型攻撃用UAVの選定のための一般競争入札の予定時期はいつか。また、最終決定する時期はいつか。
6-5 IAI製のHeronMK ⅡおよびSUBARUのVTOLは「多用途・攻撃UAV」の運用実証機とされているが、攻撃機能を保有しているという理解で間違いないか。
6-6 多用途・攻撃UAVの運用実証機であるIAI製のHeron MK Ⅱについて、実証試験の報告書は提出されているか。また、同じくSUBARUのVTOLについて、実証試験の報告書は提出されているか。まだなら、いつが納期となっているか。
6-7 多用途・攻撃UAVの取得費を計上するのはいつを予定しているか。
6-8 防衛省が導入予定の多用途・攻撃用UAVは災害対応の目的で使用される場合はあるのか。
6-9 川崎重工は日本ロボット学会からの質問への回答(9月24日付)として、「防災用途を目的とした社内研究のため、イスラエル製の無人航空機を用いた技術実証飛行を検討している」と表明している。防衛省はこの川崎重工の意向を把握しているか。また、政府を通すことなく、企業間でこうした提携を行うことは可能なのか。
6-10 概算要求に狭域用UAV(173式:47億円)と狭域用汎用型UAV(383式:11億円)の取得費が計上されているが、それぞれの採用機種について、製造企業名、製造国名、機種名、輸入代理店名、契約金額を明示されたい。
6-11 同じく艦載型UAV(小型)の取得費として37億円が計上されているが、採用機種について、製造企業名、製造国名、機種名、輸入代理店名、契約金額を明示されたい。
6-12 中域用機能向上型UAVの取得費として2式39億円が計上されているが、採用機種について、製造企業名、製造国名、機種名、輸入代理店名、契約金額を明示されたい。
6-13 輸送用無人航空機導入に資する調査・実証試験の経費として15億円が計上されている。実証試験に参加する機種について、製造企業名、製造国名、機種名、輸入代理店名、契約金額を明示されたい。
7. 滞空型UAVの取得【機種選定中】(16ページ)の予算額が表示されていないのはなぜか。機種が決定されないと、予算額を提示できないということか。11月15日のNHKの報道で、「米ジェネラル・アトミクス社製の「シーガーディアン」に決定し、1機あたり約120億円で2028年度に初号機を導入、2032年頃までに計23機を導入する計画、配備先は今後検討する」となっているが、これで間違いはないか。
8. 「装備品等の維持整備」に、約2兆2110億円という巨額の予算が計上されている。その内訳を、下記の分類で明らかにされたい。また、陸海空別の維持整備経費も明らかにされたい。
航空機
F-35A戦闘機
F-35B戦闘機
F-15戦闘機
F-2戦闘攻撃機
P-1哨戒機
P-3C哨戒機
V-22オスプレイ
E-767空中警戒管制機
それ以外の航空機
艦艇
イージス艦、
他の護衛艦
潜水艦
上記以外の艦艇
陸上の車両
10式戦車
16式機動戦闘車
それ以外の車両
9. 「スタンド・オフ防衛能力」の一環として、「水中発射型垂直発射装置の研究」に300億円が計上されている。これは潜水艦から長射程のミサイルを発射する装置の研究と理解してよいか。
10. 23式艦対空誘導弾(343億円)が計上され、「長射程の艦対空誘導弾」と説明されているが、SM-6と競合しないのか。SM-6と同程度の射程距離をもつミサイルの国産版と理解してよいか。
11. 火薬庫の新増設について
11-1 25年度予算で新設・増設をする火薬庫について、場所と棟数、予算額を明らかにされたい。
11-2 24年度予算で計上した下記の火薬庫の工事進捗状況と、完工予定時期を明らかにされたい
大湊地方総監部 4棟
舞鶴地方総監部 3棟
祝園分屯地 8棟(京都府)
大分分屯地 3棟
えびの駐屯地 2棟(宮崎県)
瀬戸内分屯地 3棟(奄美大島)
沖縄訓練場 5棟
12. 「地上電波測定装置の換装」(137億円)が計上されている。これは、空自宮古島分屯基地にあるものを最新のものと交換する作業と理解してよいか。また、沖縄島の八重岳通信所では24年度に土木工事が行われたと承知しているが、25年度予算では、新たな通信施設などを整備する計画はあるか。
13. P-1哨戒機能力向上型2機842億円が計上されているが、これまでに製造した能力向上型は何機か、また従来のP-1は何機製造したか明らかにされたい。
14. 在日米軍駐留経費負担として2,231億円が計上されている。自衛隊の統合作戦司令部の発足と、これに対応する在日米軍の「統合作戦司令部」の発足に伴い、駐留経費の負担は生じるか。
また、防衛省は、9月19日付「日米の指揮・統制の枠組みの向上に係る」作業部会を設置したと発表したが、在日米軍の「統合作戦司令部」の発足はいつごろと想定しているか。
15. 7月9日に海上幕僚監部が発表した「海上自衛隊護衛艦「はぐろ」搭載機8416号機及び護衛艦「きりさめ」搭載機8443号機の航空事故調査報告書について」を読むと、ヘリコプターSH-60K8416号機は、夜間に3時間飛行し、「いせ」艦上で給油し、さらに1時間飛行して事故を起こしている。潜水艦の追尾訓練をやりながらの4時間の夜間飛行は、人間の集中力の限界を大きく超えるものと考える。それが、今回の事故の根本原因ではないか。防衛省の見解を伺いたい。また、夜間の飛行時間について、制限は設けているか、いないのかも、明らかにされたい。
16. 島嶼部等へ必要な部隊等を確実に輸送するために、民間船舶6隻(2隻から8隻体制へ)を確保(PFI方式)とあるが(8ページ)、予算額を明らかにされたい。また、PFI方式の詳細について説明されたい。
17. 豪州の新型艦艇(フリゲート艦11隻)の共同開発商戦への日本の参加について、選定候補が日独に絞られたとの現地報道がなされている。今回の商戦への参加の法的根拠は何か。最終的な選定の時期はいつを見込んでいるか。また、この案件について、現時点でどのような予算支出が行われているか、また今後行われる見込みか。
18. 2024年度予算に計上された「防衛装備品の生産基盤強化のための体制整備事業」251億円について、実際に支払われた実績の具体的な内容(案件、金額)を示されたい。
19. 2024年度予算に計上された「防衛装備移転円滑化のための基金に充てる補助金」400億円について、実際に支払われた実績の具体的な内容(案件、金額)を示されたい。
上記質問項目について、文書による回答を求めます。
以上